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「莉菜、お帰り」
「ただいま……、あ!もしかして今日の夜ご飯ってクリームシチュー?」
「当たり。さすが莉菜の嗅覚は凄いね」
「嬉しい!ちょうど今日仕事しながら、夕飯はシチューが食べたいなって思ってたの」
「今温めてすぐ食べれるようにしておくから、服着替えて来たら?」
「うん、ありがとう」
類と暮らし始めて変わった事は沢山ある。
毎朝、目が覚めたら隣に温もりがある事。
毎晩、類が私の体を抱きしめて眠る事。
いつも一人でくつろいでいたバスタイムに、たまに類が乱入してくる事。
そして特に変わった事が、朝と夜の食事。
朝は私より類の方が先に家を出る事が多い。
だから私の方が類より遅く起きても特に支障はない。
でも、毎日それじゃダメだなと思って、類よりも早く起きて朝食を作るようになった。
今までは豪がいたけど、もちろん豪のために朝食を作るような事はしなかった。
自分のためにでさえ、朝からちゃんと料理をする気にはなれなくて。
だからフルーツやヨーグルトで済ませていたけれど、類のためなら苦手な早起きも難なく出来てしまうから凄いと思う。
朝食を類と一緒に食べる時間は、忙しい日々の中で、なくてはならないものになっていた。
そして遅めの夕食は、いつも大体類が作ってくれている。
帰りは私の方が遅くなる事がやっぱり多いから。
類の料理のレベルは日に日に上がっていて、確実に私が追いつく事は無理なレベルにまで達していた。
「うわぁ、何これ美味しそう!いただきます」
どうやって作っているのか知らないけど、シチューは普通にお皿に盛られているわけじゃなく、こんがりと焼き上がったパイに包まれていた。
「このパイ、どうやって作ったの?凄い美味しいね」
「でしょ。莉菜は絶対好きだと思ったんだよね。俺、料理これから趣味にしようかな」
好きな人と一緒に暮らし始めた事だけでも幸せ過ぎておかしくなりそうなのに。
好きな人の料理の腕前が抜群だなんて、文句なく最高過ぎる。
おかげで私は仕事中に倒れたり調子を崩すような事はなくなり、今まで以上に仕事に精を出すようになっていた。
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