何にでもなれる

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自分の細胞から、もう1人自分をつくった。 余命を半分にして。 ***半年前***  もし、あの時オーディションに応募していたら。上京していたら、今どんな人生だっただろう?  屋上で一服しながら、凸凹したビル群を眺める。それらに吹き付けるように、何度も口から煙を吐き出した。  炎天下、スーツが暑い。脱ぎたい。  遥か下方には、人間が蟻のように同じ方向へと向かっていた。交差点に差し掛かると、さらに3方向から人がやってきて、入り乱れる。  隣で、同じようなスーツを着て同じようにタバコを吸っていた同僚が、俺に言うともなく言った。 「この中で、ほんとに自分がやりたい仕事をやってる奴、どのくらいいるんだろ」  さあな、と俺はタバコを吸う。分煙、分煙と言われて、真夏だがこんな所へと追いやられている。遠くのビルに目をやると蜃気楼が見えた。  同僚も煙を吐き出す。 「ていうか、本物の人間はどのくらいいるんだろ」 「は?」  俺は思わず振り返って笑った。「暑いからって、おかしくなった?」  しかし同僚は、いたって真面目な表情だ。「知り合いにさ、どえらい天才がいるんだよ。地元ではクローンを造ってるって噂だ。そいつが造った人間が、この中にいるのかなって」  とても話について行けなかった。人間のクローンなんて、法律違反ではないのか。  ありえない。考えるだけ無駄だ。  ……けど、もし自分をもう一人、造れたら。  俺は何をするだろう。  宝くじが当たったら、と内訳を考えるように、俺は考えた。―――遥か昔に捨て去った、儚い夢が、タバコの煙と一緒に立ち上った。
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