デリート

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「おい、オマエもだ」  唐突に、近くの銃を持った男にそう言われた。 「……え? 何が、ですか?」 「両手を、頭の後ろで組めって言ったろうが」  右側頭部に衝撃。  視界が揺らぐ。  痛みに声が漏れそうになるが、こちらに照準を合わせ続けている銃口が、それを思い止まらせた。  これは、おふざけでもなんでもない。 ――本気だ。 「は、……はい」  言われた通りに頭の後ろで手を組む。  びっちりと埋まったロングシートでこれをやると、どうしても隣の人と肘が当たってしまうが最早構っていられない。 「よし……そのまま全員動くなよ」  アサルトライフルを肩紐で下げて腰だめに構えながら、車両内を睥睨する中央の男。  武装集団は、目出し帽以外は全員普通の服装だ。  どこにでもいるようなカジュアルな服から、すこしロックっぽい砕けた服の奴もいる。  恐らく、人混みに紛れていたのだろう。 「お、おい! あんたら、何が目的なんだ!?」  一人の年若いサラリーマン風の乗客が、そう問いを発した。  電車はカーブに差し掛かり、車両が若干傾く。  立ったままの武装集団なのだが、何故かバランスを崩さない。 「あぁ? 誰が喋っていいって言ったよ? 黙ってろ」 「くっ……」     
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