3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「おい、オマエもだ」
唐突に、近くの銃を持った男にそう言われた。
「……え? 何が、ですか?」
「両手を、頭の後ろで組めって言ったろうが」
右側頭部に衝撃。
視界が揺らぐ。
痛みに声が漏れそうになるが、こちらに照準を合わせ続けている銃口が、それを思い止まらせた。
これは、おふざけでもなんでもない。
――本気だ。
「は、……はい」
言われた通りに頭の後ろで手を組む。
びっちりと埋まったロングシートでこれをやると、どうしても隣の人と肘が当たってしまうが最早構っていられない。
「よし……そのまま全員動くなよ」
アサルトライフルを肩紐で下げて腰だめに構えながら、車両内を睥睨する中央の男。
武装集団は、目出し帽以外は全員普通の服装だ。
どこにでもいるようなカジュアルな服から、すこしロックっぽい砕けた服の奴もいる。
恐らく、人混みに紛れていたのだろう。
「お、おい! あんたら、何が目的なんだ!?」
一人の年若いサラリーマン風の乗客が、そう問いを発した。
電車はカーブに差し掛かり、車両が若干傾く。
立ったままの武装集団なのだが、何故かバランスを崩さない。
「あぁ? 誰が喋っていいって言ったよ? 黙ってろ」
「くっ……」
最初のコメントを投稿しよう!