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照明機能が生きていれば、現状を確認することができる。
俺は痛む腕を少しずつ少しずつズボンのポケットに持っていき、そこにちゃんと収まっていたスマホを取り出した。
だいぶ液晶が割れたりしているが……なんとか使えるようだ。
早速、辺りを照らしてみる、と――!?
「な、いや……そんな……!?」
信じられない。
俺はまだ、夢でも見ているんじゃないのか?
どうして、どうして路線がぐちゃぐちゃに分断されている!?
半ばから千切れた車両。
それを分断した地面の隆起と天井の崩落。
折れて転がる柱と、投げ出されて横たわる人々の死骸。
それはまるで、現代版の地獄絵図のようで。
この状況から推察するに、どうやら走行中に大きな地震にでも遭遇したようだが……。
ぬるっとした液体に触れる感覚。
俺は手元を、自分の近くを照らして、驚愕する。
先ほどから触れていた柔らかな感触……それは、人、だった。
あちこちに転がる死体と同じように、俺の周りにも、それが沢山あって。
壁や床と、俺との間に、一緒の車両に乗っていた人たちが、折り重なっている。
どうやら俺は、この人たちが肉のクッションとなってくれて、助かったらしい。
運が良いのか悪いのか分からないが、とにかく生き延びた。
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