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デリート
「全員、動くんじゃねぇぞ!!」
そんな怒声で、目が覚めた。
薄っすらと重たい瞼を開けると、車内の照明を反射して鈍く光る何か――銃のようなものが、最初に目に入って。
……銃?
なんだってんだ?
玩具でも持ち出して、ごっこ遊びでもやってんのか?
そう思って周りをよく観察してみると……どうやら、そうでもないらしい。
走行中の地下鉄車内には、ロングシートを埋める者と、まばらに立っている者がいる。
まだ早朝の、通勤ラッシュ前。
――確か俺は、地下鉄に乗って帰る途中だったな。
空席に座るなり、疲労からすぐ意識を手放してしまったようだ。
んで……これは夢か?
目出し帽を被りアサルトライフルを構えた男が、俺の目の前――車両中央部から睨みを聞かせている。
……本物、なのか?
ならこれはテロ?
トレインジャック?
いずれにしても冗談だろ?
けれど乗客の表情は一様に緊張感で溢れていて、とても冗談を飛ばせるような雰囲気ではない。
武装した男は、どうやら一人ではないようで。
「おら、テメェ! 動くなって言ってんだろうが!」
「撃ち殺すぞ。両手を頭の後ろで組め」
他にも車両の先頭方向に二人、後尾方向に一人。
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