冬の匂い

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「じゃあ」と嵐君がまっすぐに僕の目を見た。 「キスしたいとか、やりたいとか、思わないんだ?」 「や、……っ」 僕は言葉を失って、唇を微かに開いたまま硬直した。 「おれは思ったよ。いのりさんがおれのになるなら、そういうことしたいって。他のひとに触らせたくないし、もっとおれを見てほしいって」 頬が熱くなってきた。今、目の前にいる少年と自分との間に激しい隔たりを感じる。 「ま、まだ、そこまで考えてない」 好きだというだけで、いっぱいいっぱい過ぎる。 「第一、相手にされないと思う」 僕は男だし、キレイ系でもない。彼の好みは知らないけれど、少なくとも自分は対象外だろう。 「んー……?」 嵐君が身体ごと左に傾く。 「?」 「思ったより、行ける気がしてきた」 何が、と訊く前に、嵐君が僕の手を取り。手の甲に、啄むようなキスをした。
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