冬の匂い

3/20
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「座って。何か飲む?」 コーラとお茶しかないけど。そう言って精一杯もてなしてくれる嵐君が微笑ましかったので、コーラをもらうことにした。 「どうぞ」 プシュッと口を開けて、缶を手渡される。 「ありがとう」 「どういたしまして。……で?」 言葉と同時に、嵐君は首を傾げた。 「どうしたの?」 自分の気持ちに気付いて、まず思い出したのは嵐君のことだった。 「……神谷さんのことが好きになった。というか、好きだったんだ、って昨日気付いた。だから、ごめん」 好きだ、と嵐君は僕に伝えてくれた。それがどんなに重いことか、僕はもう知っている。だから僕は、同じくらいの誠実さで応えなければならない。 じいっと僕の目を見つめて嵐君は、そっか、とだけ言った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!