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「ま、好きにすれば」
笑うことに疲れたらしい。小野は再び携帯に目を向けた。
「うん」
好きに、する。だって自分には、彼と上手く行っても行かなくても、側にいて話を聞いてくれるひとがいるのだから。
………………………………
小野とは、次の講義の前に別れた。何か話したくなったら連絡して。そう言ったときの小野の顔は、全然チャラくなかった。
講義が終わると、僕は一度家に帰ってから彼のマンションへと向かった。父には、バイトで遅くなると思うと事前に伝えている。今日は頼まれた家事をこなして、泊まらずに帰るつもりだった。
泊まらないことで、今までよりも返済のペースは落ちるだろう。
──もしかして自分は、それを望んでいるんだろうか。彼の側に、長くいるために。
何か、屈折してるな、と思うと笑えてきた。
好きです、と。側にいたいです、と。
ひらがなにしたら十に満たない言葉が、どうして言えないんだろう。
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