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十一月になり、冬の匂いも一層濃くなって。季節が移り変わっていることを日ごと実感する。
「ありがと。助かった」
僕は小野にノートを返した。父の退院に付き合って休んだ分のノートだ。ありがたくコピーを取らせてもらった。
「ま、お互い様ってことで」
空きコマが重なっていたので、小野と学食でのんびりしている。
「小野」
「んー?」
「小野って今彼女いる?」
「今はいないけど。何で?」
「いや……、何となく」
「いのりからそういう話すんの、初めてじゃね?」
それは経験がない分、振っても話が続かないせいだ。
「片想いって、したことある?」
ふっと笑ってから。
「あるに決まってんじゃん」
小野は答えた。決まってるのか。
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