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上手くまとまらない気持ちを抱えて、彼のマンションのドアを開けると、雪が僕のところに突進してきた。
「ゆ、き?」
あれ、ぷるぷるしてる。抱き上げると、白い毛が水分を含んで、しっとりとしていた。
「雪! まだちゃんと拭けてな……、って、いのりさん」
駆け寄ってきたのは、上半身裸の嵐君だった。
「……こんにちは」
「こんにちは。雪、貸して」
「あ、うん」
言われた通りにすると、嵐君はタオルで雪をふわりと包み込んだ。
「やっぱ、水、嫌いなんだね」
猫を飼ったことはないが、友達の家の猫がかなりのお風呂嫌いだったことを思い出す。
「そ。久々に綺麗にしてあげようと思って」
嫌がられたけどね、と苦く笑いながら、嵐君は雪の額にキスをした。
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