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「ん、……」
抵抗する声も、指も、彼に絡め取られる。口の端から零れ落ちる音が浴室に響いて。どうしようもなく、悪いことをしているような気分になる。
「いのり」
キスの終わりに名前を呼んで、彼が笑った。
「大丈夫か?」
そっと背を撫でられ、息を吐き出す。
「は、い」
顔を上げて答えると、彼がじっと自分を見ていることに気付く。
「なに……?」
「いや、いのりって」
「?」
「色、白いよな」
「ああ……」
自分の外見は母親に似ていると言われることが多く、あまり日に焼けないし、なかなか筋肉がつかない。男としては、少し切ない気もする。
「そういう体質みたいで」
返す言葉が、まるで言い訳のようになってしまった。
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