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満足気に笑う嵐君が、末恐ろしい。やっぱり兄弟なんだなと思う。
「嵐ー!」
嵐君の友達の、声。嵐君は振り返って、今行く、と声を張り上げて返事した。
「あー、もう。せっかく会えたのに……」
「まあまあ」
「いのりさん、今日は青司君とこに来る?」
「ああ、うん」
「夕飯、おれのも作ってよ」
「分かった」
「楽しみにしてる。じゃあ、また後でね」
バイバイ、とこどもっぽく手を振って、嵐君は友達のところに戻っていった。
嵐君の想いを受け入れられないのに、僕は嵐君のことが大事だ。神谷さんの弟だからとかそういうことではなく、あの大人びた、それでいて純粋な少年を愛おしく思う。そう思ってしまうのは、間違いだろうか。
「……今日は、ハンバーグとオムライスにしよっかな……」
ぼそっとコンクリートに呟いてから、僕は生協に向かってまた歩き出した。
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