好きな男の子にパン加えてぶつかっていく話

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 私の名前は佐藤ゆきはら。こんな名前だけど一応女。  そんな私がなぜ、口にパンを加えながら駅までダッシュしているのか。それは、どうしてもぶつかりたい相手がいるからなのだ。  ……そう、あの超絶美形眼鏡イケメンの、山口カナタくんにね!!  けれど、本当の駅に入ってしまうと、あそこは地下鉄なので沢山の客で込む。出来れば、ぶつかるならあの角よね! 「あ、カナタくんが視界に!」  カナタくんが視界に入ると言うことは、もう彼は向こうの角にいると言うこと。私は更にスピードを上げたが、カナタくんが途中小走りになり。ぶつかるどころか、彼の視線に入ることすら出来なかった。  いや。地下鉄の中へ入ってからでも、強引にタックルは出来る。  もはや、偶然を装うことを忘れて、私は駅の中へ入って行った。  ・ ・ ・  駅へ入り、カナタくんを探す。すると、少し大きな、茶色いブレザーを発見。あれは間違いなく彼だが、何時もと行く経路が違うような……? とは一瞬感じたものの、どうしても彼にタックルしたかった私は、食パンを加えながら彼を追いかけ、その地下鉄の中へと入って行った。 「ふぁなた(カナタ)く~ん!」  地下鉄に乗って、自分なりのスマイルでタックルをしに行こうとすると、カナタくんはつり革を引っ張って後ろへ下がった。そして勢いを止められなかった私は、彼の隣の怖そうなお兄さんにタックル。相当怒られた。  私が謝っている隙に、カナタくんは別の車両に行ってしまったみたいだ。 「本当にごめんなさい! 失礼致します!!」  私は口にしていたパンを一旦手に取り、怖そうなお兄さんに深く頭を下げ、そしてそのまま別の車両へと逃げ込んだ。再度パンを口に挟んで。  ・ ・ ・  あらゆる車両を見て回ったが、どこにもカナタくんはいない。  まさか、あまりのイケメンさに、神が天使と見間違えてさらったわけじゃ……!?  などと考えていると、目の前のトイレから彼が丁寧にハンカチで手を拭きながら出てきた。 「ふぁなた(カナタ)く~ん!」  そこをすかさずタックルしようとしたが、彼は目の前で高く跳躍。私は壁に激突してたんこぶが出来た。  しかし、姿が確認できたし、今彼が去って行ったのは音的に後ろの車両だ。私は頭を撫でながら、後ろの車両へと歩いて行った。
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