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「着きましたよ。真駒内だけど」
「ついて行くよ、君にタックルするまでは」
「何なんでしょうね、その謎の目標」
私は彼の四方八方目がけて何度もタックルした。が、全部華麗に避けられたり、別の障害物で盾にされた。どうしてもタックルされたくないらしい。
途中、バスに乗ったりもして、その間はカバディを続けた。バスのアナウンスで半ギレされていた。
そんなこんなで、カナタくんが足を止めたのは、真駒内滝野霊園だった。広くて沢山のお墓が並んでいる。
場所が場所なので、タックルやカバディは諦め、私は彼についていく。すると、一か所の草が生えた場所にやって来た。
「私の親、樹木葬なんです」
「そうなんだ……お父さん? お母さん?」
「まだ二十九の母が、私を産んでそのまま眠っています」
「……そっか。じゃあ今日は命日?」
「いいえ。ただ、何となく帰りたかっただけです」
彼は手を合わせ終えると、立ち上がった。
「行きましょうか」
・ ・ ・
初めの地下鉄代は除き、此処に来るまでの代金は私の分まで払ってくれたカナタくん。理由はどうあれ、自分が君をここまで招いてしまった。かららしい。
「それじゃあね」
「カナタくんは乗らないの?」
「私はもう少し残っています」
珍しく笑顔のカナタくん。お楽しみのところ悪いけど、私にはまだやらねばならないことがある。
地下鉄が去って行くのを見送ると、カナタくんは私を怪訝そうな顔で見る。
「ごめん、切符代は後で自分で払うから」
「いや別に良いですが、早く帰った方が良いと思いますよ?」
「君も一緒に帰ろうよ」
「いや、ですが私にもやりたい用事と言うものが――」
「お母さんのところへ、帰ること?」
ムスッとした表情で私は顔を上げる。すると、カナタくんは困ったように眉を下げた。
「そ、そんなことじゃ……」
「じゃあ、何でさっき、何となく帰りたかったって言ったの? 普通、何となく行きたくなったって言うでしょ?」
「……それは」
私はカナタくんの両手を掴んだ。
「ここは人が多い。とりあえず、外行こうか」
・ ・ ・
駅の前のベンチに座らせる、その間も、私は彼の両手を掴んでいた。
すると、彼は諦めたように本当のことを話し出した。
「……嫌なんです、こんな人生」
「どうして?」
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