ギャングと田舎のばあちゃん

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 そのまま、ロッドがごそごそと手荷物をあさりだす。それをぼんやり見ていると、目の前に銀色の水筒を突きつけられた。 「……何だこれ」 「オレの田舎のばあちゃん直伝、特性の健康ジュースっす! アニキ、どうせいつもみたいに何も食べないだろうと思って、作ってきたっす」 「ロッド、お前……」  少し感動しながら受け取るジャンに、「馬車旅で、途中で倒れられたら迷惑っす」と真顔でロッドが答える。 「優しいんだか冷てぇんだか、分からねぇやつだなぁお前も……」  ぼやき、水筒に口をつけると、口の中に青臭い苦味と生臭さが思いっきり広がった。次いで、刺激的な辛味が追い討ちをかけてくる。むせて吐く程ではないが、じんわりと舌に嫌な後味が残る。 「……これ、何入ってるんだ?」 「生のほうれん草と生のピーマンをすりつぶして、生卵と牛乳を混ぜたっす。隠し味は生のにんにくっす。なんでも生が一番健康に良いんだって、田舎のばあちゃんが言ってたっす。美味しいっすか?」 「……お前、味見はしたか?」 「もちろんしてないっす! アニキと間接キスなんて嫌っす」  「まぁ、俺も嫌だなぁ」と応えつつ、ジャンはまた一口水筒に口をつけた。 「……まじぃ」  ぼやいた声は、歩き出した馬の足音にかき消される。自分の口が、やたらにんにく臭い気がした。
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