ギャングと田舎のばあちゃん

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 馬車は決して乗り心地の良い移動手段ではないが、大陸において最も普遍で必要不可欠な乗り物ではある。個人で所有している者は少なく、金持ちの貴族や商人が所有している他は、辻馬車という乗り合い馬車が、庶民にとっては一般的だ。  ジャンとロッドが乗っているのは、ベインファミリーが複数持っている馬車のうちの一つである。任務に必要と認められたときだけ、運転に問題がないことを条件に貸し出しが許されている。  ジャンは地図を広げながら、「さて」と呟いた。 「街には今日中に着くぞ。早くに出たから、馬車なら日暮れまでには間に合うだろ」  大きな街は壁に覆われており、日暮れと共に唯一の通用口にある門が閉められてしまう。そうなると、次の日の朝まで野宿だ。 「しっかし……無事買い取ったら、明日からガキのお守りかよ……」  子供は苦手だ。うるさいし、自分勝手だし、すぐ泣くし、鼻水とか汚いし、やっぱりうるさい。キンキンした声を聞いていると、訳もなく苛々して頭が痛くなってくる。  ジャンに子供の年齢はよく分からなかったが、写真の娘はまだ十歳かそこらだろう。娼館で働いているとは言え、道理が通じる歳でもあるまい。 「オレは子供、キライじゃないっす」  手綱を操りながら、鼻唄混じりにロッドが言う。 「たくさん兄弟がいるんで、チビの扱いには慣れてるっす」 「そうか……だからボスは俺らにこの任務を寄越したわけか」 「アニキ、痛いっす。グリグリ、止めて欲しいっす……」
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