こんな怪談

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 店主は急に静かになると、夢遊病者のように薬局から出ていった。  そして本通に出たところで、ダンプカーに轢(ひ)かれて即死した。  恭子は溜め息をつくと、 「あーいう人間には困ったものね……」  その夜、N団地に戻った恭子は、まずA棟を見詰めた。  やがてA棟の各部屋から悲鳴が聞こえ始めた。  つづいて恭子は、B棟……C棟……D棟……と、前に立っては見詰めていった。  やがて、それぞれの部屋から、次々と悲鳴が聞こえ始めた。  窓を開けて、飛び下りる男女も現れた。  後方からはパトカーや救急車のサイレンが聞こえていた。
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