午後4時44分、精霊の囁き

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彼を呼び出したのは、次の日の放課後のことだった。 場所は地下鉄M駅で、ぼくは約束の時間よりも早く待ちかまえていた。 「空木、こんな場所に呼び出してなんの用だ?」 声がしたので振り向くと、そこにスーツ姿の男が立っていた。 うちの高校の教師である風祭だ。 背が高く端正な相貌なので、既婚者なのに女子に人気が高い。 「すみません風祭先生、実は雪ノ下アヤカのことで相談がありまして」 いきなり切りだすと、風祭の表情がこわばる。 「雪ノ下は先生たちも必死に捜しているんだよ」 嘘だ。 アヤカの母が亡くなり義理の父が彼女を疎んじているから、ろくに捜索願を出さずに放置しているとの噂だ。 どうせ東京に家出したのだろうという考えしかないから、大人はまじめに取り合おうとしないのだ。 「空木、雪ノ下のことでなにか知っているのか?」 風祭が神妙な面持ちで訊いてきた。 その偽善に満ちた表情に、めまいのような怒りが湧く。 アヤカの悪い噂は、この風祭と付き合っているということだ。 既婚者であり教職者である風祭の体面上、アヤカが失踪したことで交際の事実を隠蔽しようとした。 学園側が強制的に、生徒のLINE履歴まで削除させたんだ。
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