午後4時44分、精霊の囁き

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「彼女を知っています」 「……それは本当なのか?」 「なぜ嘘だと思うのですか?」 逆に問いを返すと、風祭が訝しむように眼を細める。 「お前みたいなやつが彼女の知り合いだと思えない」 棘のある言葉にひるみ、まばたきした瞬間だった。 どこからともなく一陣の冷風が吹きつけ、首の後ろの産毛がぞわりと逆立つ。 驚いて振り向くと、そこにアヤカの幻姿が見えた。 長い黒髪を垂らして、周囲の喧噪とかけ離れたように茫と立っている。 途端に構内が灰色に滲んだ。 「どうした空木?」 ぼくの緊張した表情を見て取ったのか、風祭がうわずった声をあげた。 当の本人も心なしか、表情に蒼白の色が差している。 だがアヤカの幻姿が見えないのか、なぜ自分が悪寒を感じているのか戸惑っている様子だ。 「先生には見えないのですか?」 「な、なにが見えるというんだ!?」 どうやら本当に彼女の姿が見えないらしい。 アヤカがすぐそこにいるのに、キョロキョロとあらぬ方向に眼を走らせていた。 ぼくは驚いて眼をまたたいていると、その度にアヤカがコマ送りごとく風祭に近づいていく。 名状しがたい戦慄が、ぞくぞくっと背中から頭に駆けぬけた。
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