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首がもげて四肢が断裂した体の者。
鬱血した顔で首に赤黒い痣がある女。
頭が砕けて白子のような脳が垂れている男。
皆が皆、不慮の死を遂げた屍者たちではないか。
たちまち息が詰まり、体を流れる血潮が一瞬で凍りついた。
左右の座席に座る屍の群れ、その中心にアヤカが立っていた。
「……せめて一緒に…………」
両の手を伸ばしながら、ずるずると足を引きずり向かってくる。
うつむいていた顔を、むくりと上げた。
長い黒髪がはらりと流れると、どろどろに糜爛した骸のごとき顔半分があらわれた。
眼が炎のごとく紅く染まり、その唇が悶える二匹の蛇のように上下するのが見えた。
「……せめて一緒に……死んでちょうだい」
アヤカが両の手を伸ばして、ぼくの首をつよく絞めた。
土のように冷たい感触だ。
その力に抗うことなく紅く染まる視界のなかで、ひたすらに彼女に詫びていた。
「ごめんなさい……風祭を逃がしてしまって……代わりにぼくを連れて行ってかまわないから」
ぎゅっと眼を閉じると、耳に届く音があった。
轟々となる耳鳴り? いや列車の轟音か? 意識が遠のいて、どうでもよくなった。
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