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その地下鉄は闇を知っていた。
ひそやかに語られる黒い噂がある。
「午後4時44分、地下鉄にある“幻の1番線”に幽霊列車がくる。その列車を見た者は、誰も知らない異世界に連れていかれる。そこから帰ってきた者は、誰ひとりいない」
神奈川県にある市営地下鉄K駅に伝わる話だ。
そのときまでは、ネットで囁かれる子どもじみた話だと思っていた。
あの少女に逢うまでは──。
ぼくが彼女を知ったのは、ある小説の投稿サイトだ。
「アマリリス」というペンネームを使い、あまり人と交わらぬクリエーターだった。
それでも一部の識者には、知る人ぞ知る存在のようである。
隠れた才能とでもいうのか、ページ履歴を覗くと大物クリエたちが足跡を踏んでいた。
そんな彼女に惹かれたのは、はかなげな詩や短歌の数々を読んでからだ。
情緒豊かな言葉の韻は、まるで魔法の呪文のようだった。
この世をはかなむ厭世的な言葉にふれるにつけ、ぼくのように中二病を患わせている者には胸に刺さった棘のようにじんじんと響いた。
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