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それと同時に、自分とはちがう天賦の才にため息しかでなかったんだ。
「どうしてこんな言葉が生みだせるのだろうか……」
まるで蝋燭の灯火が消えるまぎわの、一瞬のきらめきに似ていて切ない言葉。
日々に綴られる哀しくも美しい詩に、ぼくはどうしようもなく魅了されていった。
陶酔に浸る毎日のなかで、彼女が同じ高校に通う女生徒だと知ったのは最近のことだ。
アマリリスが毎日投稿する写メが、見覚えのある風景だったからぴんときた。
いつも同じ場所の写真なのだ。
(この場所で待っていれば、きっと彼女に逢えるはず)
ぼくは憧れの人に会いたい一心で、地下鉄M駅の構内で待つことにした。
もう夕方になろうとした頃、ふいにそれらしき女性が佇んでいることに気づく。
はつらつとした地上の光とはちがう照明の下、物憂げな陰のある表情の少女が、長い黒髪を垂らして駅の壁を眺めている。
その制服を見て、すぐに同じ高校の生徒だと知れた。
無機質な地下鉄に咲いた一輪の花のように、彼女の存在が匂いたった。
ぼくはしばし忘我を漂う。
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