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雪ノ下アヤカが消えた。
地下鉄で逢った次の日から姿を消したんだ。
“この世界の半分は偽りでできている”
彼女の投稿サイトに残された最後の言葉。
野蛮な噂を気に病んで、どこか遠くへ行ってしまったのかな?
こんな馬鹿げた考えがいくつも、重さをともなわない羽毛のように、ぼくの脳裡をひらひら舞い踊る。
そういう虚ろで淋しい日々がつづいた。
ぼくはいつしか彼女を最初で最後に見た場所──地下鉄M駅にある幻の1番線に足を運んでいた。
おりしも時間は4時をまわり、辺りにしんと昏い気配が忍び寄りはじめる。
ふと見た幻の1番線に、茫と立つ少女の姿があった。
ぼくの眼は紅い槍で貫かれる。
「あ、アヤカさん……!?」
すがるような声で言った。
それはアマリリスの花のように佇むアヤカだった。
血の代わりに体を流れる期待。
「……せめて一緒に…………」
アヤカが紅の唇をほとんど動かすことなく囁いた。
ふあぁんっ!!──
列車の警笛が空気を震わせた。
われ知らず心臓がとどろく。
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