午後4時44分、精霊の囁き

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雪ノ下アヤカが消えた。 地下鉄で逢った次の日から姿を消したんだ。 “この世界の半分は偽りでできている” 彼女の投稿サイトに残された最後の言葉。 野蛮な噂を気に病んで、どこか遠くへ行ってしまったのかな? こんな馬鹿げた考えがいくつも、重さをともなわない羽毛のように、ぼくの脳裡をひらひら舞い踊る。 そういう虚ろで淋しい日々がつづいた。 ぼくはいつしか彼女を最初で最後に見た場所──地下鉄M駅にある幻の1番線に足を運んでいた。 おりしも時間は4時をまわり、辺りにしんと昏い気配が忍び寄りはじめる。 ふと見た幻の1番線に、茫と立つ少女の姿があった。 ぼくの眼は紅い槍で貫かれる。 「あ、アヤカさん……!?」 すがるような声で言った。 それはアマリリスの花のように佇むアヤカだった。 血の代わりに体を流れる期待。 「……せめて一緒に…………」 アヤカが紅の唇をほとんど動かすことなく囁いた。 ふあぁんっ!!── 列車の警笛が空気を震わせた。 われ知らず心臓がとどろく。
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