午後4時44分、精霊の囁き

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「いけませんよ」 いきなり声が背中を叩いた。 はっとしてまばたきした瞬間、アヤカの姿が消えていた。 (いまのは……幻影かな……?) 逢魔が時の蜃気楼か。それとも心の渇望が幻となって見えたのだろうか。 背後をそっと振り向くと、そこにひとりの少女が立っていた。 「あ、アヤカさん……!?」 いや、少女はアマリリスではなかった。 うちの制服とは違うセーラー服を着た少女──仄光る白い髪に白蝋のごとき肌をもち、凜とした雰囲気をまとっていた。 その横には大きな白い犬が寄り添っている。 (地下鉄に犬……盲導犬かな?) それで少女の顔を窺うと、その大きな瞳はぼくの姿を映していないことに気づいた。 「彼女にかかわるのは、やめたほうがいいです」 少女は虚空を見つめながら唇を噛むように言った。 「えっ……彼女が見えたの?」やはり幻ではなかった。 「やめたほうがいいと思います」 こくりとうなずいた。 「いまのアヤカさんはいったい!?」
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