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「いけませんよ」
いきなり声が背中を叩いた。
はっとしてまばたきした瞬間、アヤカの姿が消えていた。
(いまのは……幻影かな……?)
逢魔が時の蜃気楼か。それとも心の渇望が幻となって見えたのだろうか。
背後をそっと振り向くと、そこにひとりの少女が立っていた。
「あ、アヤカさん……!?」
いや、少女はアマリリスではなかった。
うちの制服とは違うセーラー服を着た少女──仄光る白い髪に白蝋のごとき肌をもち、凜とした雰囲気をまとっていた。
その横には大きな白い犬が寄り添っている。
(地下鉄に犬……盲導犬かな?)
それで少女の顔を窺うと、その大きな瞳はぼくの姿を映していないことに気づいた。
「彼女にかかわるのは、やめたほうがいいです」
少女は虚空を見つめながら唇を噛むように言った。
「えっ……彼女が見えたの?」やはり幻ではなかった。
「やめたほうがいいと思います」
こくりとうなずいた。
「いまのアヤカさんはいったい!?」
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