午後4時44分、精霊の囁き

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「あなたがかかわることではありませんよ」 にべもなく言われて、ちょっとたじろいだ。 「その犬、名前はなんていうの?」 言葉繋ぎに訊くと、少女ははじめて眼をまたたいた。 「ナライが見えるのですか?」 「うん、変わった名前だね」 いっぱいの愛想笑いで答えると、 「ほほう。この者、我が見えるらしいな」 鉛のような声が割って入った。 だが辺りを見渡しても、それらしき男はいなかった。 「我はナライ。タユナを守護する精霊だ」 また声がした。 前以上に眼をまたたくと、声のしたほうを見入った。 大きな白い犬が、にっと逞しい犬歯を覗かせる。笑ったみたいだ。 その灰色の眼は、たしかに叡智の光を宿していた。 「犬が喋った……!?」 「犬ではありませんよ。ナライはニホンオオカミですから」 「日本にオオカミっていたの?」 「これだから人間は度しがたい。わずか100年前のことを忘却の彼方に押しやるのだからな」 ナライが溜め息をついた。 「き、きみたちはいったい!?」 「わたしはシャーマン。大いなる存在の声を聞き目に見えぬ世界との橋渡しをする、精霊に選ばれし者」 少女が凜とした声で告げた。
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