ゴミ屋敷へようこそ

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手垢だらけの鏡に向かい 服を着て 母の黒真珠のネックレスとイヤリングを付ける 「さ。お母さん 行こうか。」 ゴミが重なり合っている横に置いてある 白い布を被された箱をそっと持ち上げた 「お母さん こんなにコンパクトになれていいな。」 今から四十九日前、母は亡くなった 元々、体があまり強くなかった母は 私を育て上げるために必死で働き やっと子育てがひと段落して いよいよ私が親孝行をしようと頑張っている最中 風邪から肺炎になり さらにはその肺炎をこじらせ そのまま帰らぬ人となった 敷いたままになっている布団を見て 私はそこに母の姿を重ねた 辛そうに咳き込みながらも 母はいつも私には笑顔だった こんなに汚い部屋で 何がそんなに楽しかったのだろうか 「いってきます」 その布団に向かって・・・ 母に向かって言ったつもりだが 「あ。違うわ。 今から一緒に行くんだったね」 手に持っている 母に笑いかける
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