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「おいしーっ!」
「はは、ビールみたいに言いますね」
「本当にビールなら、なお良かったんだけどね~」
「はは、ごめん」
いつのまにか少し砕けた調子で話せるほどまでになっていた。
それが何より嬉しかった。
遭遇してしまったのが新名くんで良かったし、
明日の会議のことを相談したのが新名くんで良かったし、
手伝ってもらえたのが新名くんで良かったし、
そしてなにより、
誰も邪魔なく二人きりでずっと居れたことだった。
我ながら欲深いというか…浅はかというか…。
イケメンが罪なのか面食いが罪なのか…。
いつもと変わらない美幸との椅子の距離が、相手がイケメンなだけでこんなにドキドキ意識して緊張してしまうとは…。
隣で腕を伸ばして首を鳴らしていた新名くんを横目でちらちら見ていた。
あれっ…?
「…?…新名くん、何それっ。すごい目のクマ!」
「え?あ、ああ。やっぱりわかります?」
あまりにもケロッとして言うものだから、いつものことなのだろうか。
「いつも睡眠時間短いの?残業とか?」
彼は左目の下をさすりながら平然としているため、よくこういう心配をされているんだろうなと瞬時で悟った。
「いや、別にそんなんじゃないですよ。寝付きが悪いんです元々。クマはどうにかしないといけないなぁとは思ってるんですけどね、はは。営業マンが寝不足な顔ってダメですしね」
私は大胆な行動だが、少し近寄り彼のきれいで整った顔をまじまじと見た。
たしかに昨日今日でできたようなクマではなかった。
寝付きが悪いというのは恐らく本当のことだろう。
彼イコール笑顔というようなイメージで、いつも涙袋かなと思っていたものは、偶然目の下のクマが作ったローライトの役割を持っていたのであった。
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