9人が本棚に入れています
本棚に追加
「おはようございま~す」
「はよーございまーす」
「おはようございまー…え!?」
先に出社して座っている私を目撃した彼女は、回転椅子を私まとめて自分の方へグルッと大きく回した。
「レンレン…!!何その女子女子した服装!!」
今のような秋始めの通常の服装と言えば、後輩の女子達のように雑誌の流行に則ったいかにも可愛らしいOLスタイルはせず、美幸のようなスーツほど堅苦しいわけではないが、動きやすいストレッチパンツに白のトップスに綿や麻のジャケットという感じである。
それが今日は美幸に驚かれるのも承知の上。
ブラウスと秋色のカーディガンに袖を通し、ふんわり…は恥ずかしいというか年齢にそぐわないというか…もともとクローゼットになかったので、膝の隠れるくらいのタイトスカートを履いていた。
友人の結婚式くらいしか履かないようなヒールも値段も高めの靴も今日はそれで通勤した。
正直動きにくいし、靴擦れもしたし、朝の通勤だけでも無駄な体力を浪費した気分である。
「どうしたの!?今日デートなの!?」
「いや…なんにもないって」
「なんにもないわけないでしょ!レンレンが色づいてそんな女子力高めましたなんて服装…男を落としにいくからでしょ!?私にはわかる!無駄に2年半以上隣の席で一緒に働いてないから!!」
「無駄にって何よ…。もー!とにかくデートとかじゃないから。今日の会議に気合を入れてるの!」
「え~うっそだぁ~」
「もう…早くミーティングルーム行って準備するよ!」
ニヤニヤが止まらない美幸の顔をしっしっと手で払いのけ、私はサンプルと資料をがさっと持って廊下に出る。
ただ出る前にちらっと営業課をみる。
彼の姿を朝から何度も確認したが、デスク上の持ち物をみて事務所に居ることだけしかわからなかった。
少し肩を落としながら、それでも新名君と二人で頑張った力作を企画部長に鼻高々と披露してやろうと背筋をのばした。
最初のコメントを投稿しよう!