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「あっ!あそこに居るの営業課の新名さんだよね絶対!」
「えっうそ!昼間に会社にいるとか珍しい!見れてラッキーなんだけど!」
「ほんとそれ!も~かっこよすぎ~。だって今は席があいてないだけで、今すぐにでも部長になれるくらいの業績なんでしょ~?」
「そうそう。大きい契約はとれるし、残業もいとわず仕事熱心で、おまけに部下や同僚の悩み相談にものるし、上司や取引先との付き合いもこなすし」
「うんうん。顔も芸能人並みにイケメンだし、スタイルもいいし、清潔感もあるし、礼儀正しいし、笑顔も素敵だし、身に着けている物もお洒落だし」
「まさに理想の塊」
「「ね~!!」」
………。
コホン
「三森さん、大野さん、次、Bミーティングルームで商品会議だからね」
「「あっ!す、すいません!!」」
バタバタバタバタ…
指示したばかりの場所へそそくさと逃げていく後輩の若々しい背中をみつめながら、私はため息をついた。
なんでデスク上の配布資料とサンプルを持たずに行っちゃうのよ…。
何度指摘してもちっとも直らないことばかり…。
これ以上影で”ガミガミ班長”などと呼ばれたくはないが、班長たるもの放っておくわけにはいかない。
仕方なく彼女たちの持ち物も抱えて事務所と会議室をつなぐ廊下に出ようとしたところ…
「僕、ドア開けますよ」
そう告げるよりも先に、荷物で手が塞がっていたのを彼の手が助けてくれた。
「…ありがとう…新名くん」
「いえいえ」
彼の爽やかな笑顔にはマイナスイオンが出ているのではないかと心底思う。
彼の体臭…いやいや…ではなく、マイナスイオンをさりげなく鼻呼吸で取り込む。
「これから営業?」
「はい、行ってきます」
「い、行ってらっしゃい」
「寿さんも部下のことばかり背負いすぎちゃ身体に悪いですよ」
「あ…うん…」
ニッコリ会釈し、彼は左腕の時計を確認しながら事務所の入口である廊下と反対方向へ颯爽と会社を後にした。
ため息…聞かれてたのかも…。
営業課にも”ガミガミ班長”が広まっていたらどうしよう…。
更に大きなため息を吐きながら落ち込んだ背中のままミーティングルームへと向かった。
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