17人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の声が渇いたように低く響く。うう、やっぱそっちに話行くか。わたしは情けなく首を縮めた。
「そのうち。…いつか、いろんなことが様子が変わって。上手く行くようになるかもね。そういう日が、来たら。…可能性は…、なくもないかもしれないけど」
ちょっとだけ彼の声が硬くなる。
「それって、あいつが駄目って言ってるから?俺と一緒に住むなって?…俺じゃ頼りないし、力もないし。…夜里さんを守れない、任せられないって言われてるから?」
「あの人は別に。…何にも、言ってないけど」
最近は。
言葉にせずに頭の中で付け足す。でも、加賀谷さんと住み始めた最初の時に、高城くんと付き合うのは構わないけど二人で住んだり結婚したりは駄目、とはっきり言い渡されてる。その後同じ話が蒸し返される機会がないってだけだ。多分方針は変わってないだろう。
わたしを守れるのは自分だけ、って加賀谷さんが自認してるのは明らかだと思う。
不意にわたしの手を握りしめてる高城くんの両手に力が込められた。
「夜里さん。…今から、いいかな。夜里さんと二人きりになれる場所に行きたい。…キスしたい。今すぐ」
まだ時間少し早い。…かも。
でも、それはまあ、いい。わたしは素直に頷いた。だって、わたしなんかが彼にしてあげられること、これくらいだもん。そばにいることも、手助けしたり支えになることも。…何にもできてる気がしないし。
せめてわたしの身体で彼の求めに応じて、慰めてあげられたら。
わたしは彼の目をまっすぐ見返して、少し甘い声で囁いた。
「いいよ、いつでも。…高城くんなら。だって、わたし、あなただけだもん。もう…、今は」
「は…ぁっ、あん…、や…ぁ…、もぉ」
今日、激しい。ラブホの広くてがっしりしたベッドのスプリングが半端なくぎしぎし鳴り続ける。わたしの上で攻め立てるように腰を遣う彼が覆い被さるようにしがみつき、唇を貪った。呼吸が苦しい。気が遠くなりかけ、金魚のように喘ぐ。
「…いい?ここ…、夜里。…すごい、動いてる…」
「あぁっ、いい…っ、い…、のぉ…」
強く奥を突かれ、舐められ、弄られて。どうしようもなく乱れながら、わたし、これでいいのかな、とこんな場面で変な気の迷いが生じる。
高城くんのことは好き。セックスも気持ちいい。彼といると優しい、あったかい気持ちになれる。
最初のコメントを投稿しよう!