17人が本棚に入れています
本棚に追加
後で全てが終わってから今の言葉を記憶の中から拾い出して改めてゆっくり考えればいい。今は…、もっと、いましか出来ない大切なことがある。
目の前のこの人のことしか考えたくない。それとわたしの身体の切ない欲求のことだけ。
「かがやさん」
わたしは陶然とした色を抑えきれない甘えた声でその名前を呼んだ。
「お願い。…ベッドに、いきたい。広いとこで、ちゃんと服を脱いで。…加賀谷さんの身体を全部感じたいの。わたしを隅々までしっかり抱いて」
肉食の淫乱な女と思われたくないくせに、わたしを脱がせてくれようとする彼の手がもどかしくて振り払うように自分で服を取り去った。あまりの勢いのよさに彼が思わず笑ったくらい。
「なんか、お風呂に入る時の元気な子どもみたいだな」
「どうせがきんちょですよ。胸も今ひとつ物足りないし…」
「そんなことない。…全然足りないとこなんか。ひとつもないよ」
一糸纏わぬわたしの身体を堪りかねたように抱きすくめ、ベッドに押し倒す加賀谷さん。仰向けにされながら呼吸を弾ませつつ文句をつけた。
「加賀谷さんも。脱いで、ちゃんと。全部」
「あ」
彼は慌てて自分のファスナーに手をかけた。珍しくあたふたしてる。わたしは起き上がって手を伸ばし、彼が脱ぐのを手伝った。露わになったそれをうっとりと手に取る。彼が焦った声を出す。
「こら、悪戯猫。触るな、勝手に」
「なんで?加賀谷さんのここ、すごく素敵。…ね、舐めていい?」
淫乱と思われたくないが聞いて呆れるが、自分としては今までのセックスとこれが完全に違ってることははっきりわかる。クラブでのみならず、高城くんとのときだって自分から積極的にどうこうしようって思ったことなんかない。いつもされるがままで受け身だった。
なのに今日のわたしは何だかおかしい。浮き浮きして、幸せな気持ちがこみ上げてきて彼に自分からがば、と覆い被さりたい。わたしの方が彼を襲って食べちゃいたいくらい。ぎゅっとしがみついて離したくない。…これが、大好きな加賀谷さんの身体。
彼は半端なく慌てた様子でそれをわたしから手で覆って遠ざけた。ちょっと強い口調で拒む。
「絶対駄目。そんなこと、したら。…一瞬で全部終わっちゃう、確実に」
「何だぁ、残念。加賀谷さんに気持ちよくなってもらいたかった…」
わたしの口で。あんまり正直技術自信ないけど。
最初のコメントを投稿しよう!