本編 第一部

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人々の群れの中へ。極彩はただ炸薬の火炎に、散る花弁は鉄火のそれ。 爆炎が、血肉を纏って拡がる。それらは奇妙なことに、水気を帯びるのが最初だけ。 ぱたり。石畳みの上に落ちるこれらは、一瞬で枯れたみたいに炭化する。今にも風化する、そんな予感を湛えて。 わたしはこの惨状に一瞥し、元々は雑踏でひしめいていた景色を見直す。当然といえば当然で、そこには阿鼻と叫喚が病みたいに拡散していた。 「……ひどい真似」 花火の仕業に対して言う。それを執り行った連中━━いや、“連中”なんて言えないか━━にも、対応はしている。 けれどそれは、はっきり言って、ありありとした侮蔑だった。眼前の“人間もどき”達に対しての。 「あぁ、全く。仕様がないねぇ、神様の仕業なんてのは」 わたしは左手を胸元に突っ込む。赤い改造浴衣が少しはだけた。同時に、再びの軌跡を描いて、花火がこちらに突撃。 やおらに、わたしに向かっていやがる。それが着弾し、わたしの身体をバラバラにする前に。 わたしは左手を引き抜いた。照準を目方で合わせ、ろくに焦点も合わせずに。 「〈承認:P90〉ファイア」 音声認証━━といっても、識域下の発言だから、実際に声は出ていない━━を済ませ、引き金を引く。900発/mの弾幕を2秒ほど引き絞り、刹那に花火は爆散した。 しかし、また数発。別の屋台列に炸裂する。悲鳴、断末魔、何時もの様に聞こえる。
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