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聞こえて来やがる。わたしは小さく舌打ちした。
「存在意義も不確かな連中がピーピーと」
不快感が凄まじい。わたしは立ち上がり、右手を中空へ差し向ける。
「〈Cu.s(キューズ)〉、アウトプット」
今度はしっかり発声し、掛け声と共に光が収束する。その勢いにはためく衣。
そして右手には、素朴な棒が握られる。柄や鍔が備わり、厳めしい棍棒が顔を出す。
ゴツゴツとした表面に、しかし全体としては緑色。これを見るたびに思い出す。あの男、まったく憎らしいアイツの台詞。
『今のお前なんて、水分の無いきゅうりみたいなもんだよ』
うるせぇよ。わたしはそう嘯くと、石畳みを踏み砕いて駆け出す。
戦場となった日常を、喧騒の意味が変わった夏祭りのなかを。いつの間にか、辺りは砲声と鉄火に溢れている。
この散発する明かりにも、人生とやらは見えるだろうか。今となっては分からないけど、少なくとも祝祭的ではある筈だ。
戦争、という祝祭。舞い散る血肉と、脳漿が彩るパレード。
だからわたしは司祭のように、祈るように銃弾を叩き込む。
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