約束

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約束

来た。今日もユミちゃんが僕の居場所に来た。 いつも同じ時間にピンク色のバケツに赤のスコップとプリンの空きカップを入れてスキップをしながらやってくる女の子。僕の唯一の楽しみ。 この場所は僕とユミちゃん以外誰もいない。遊具の種類が少ないからだろうか。 ユミちゃんは来る度に僕を格好良くしてくれる。彼女の目指す完成形は解らないが、日々違った自分になれることがとても嬉しい。 ユミちゃんとの出会いは今から一か月ほど前。素手で簡単に作られた僕に向かっての、「私の名前はユミ。これからよろしくね」という自己紹介から始まった。 今日もユミちゃんはバケツに水を汲み、僕の横に運んできた。 僕の前でしゃがみ込み、眩しい笑顔を向けてくる。「今日は屋根を付けてあげるね」という優しい声。いつまでも聞いていたいと思う。 汲んできた水で土を固め、それをプリンのカップに詰める。そして慎重に僕の頭上に置いた。僕自身に自分の姿は見えないが、ユミちゃんの表情を見る限り格好良く仕上がったに違いない。     
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