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「あ、満月」
「やっぱり、気づいてなかったんだ」
そう言われてみれば、普段暗くて足元がかろうじで見えるくらいの道で穂花を認識できたのがおかしな話だった。
「ねぇ、久しぶりに少し話さない?」
暗闇に映える白のワンピースの裾を抑えて、穂花が土手に腰掛ける。
違う高校に入学して二年生になった俺たちが何を語り合えるのかはわからなかったが、とりあえず穂花にならって肩から下げていたエナメルのバックを地面に下ろした。
「あ、大ちゃんごめん。場所、変わろう」
そのまま穂花の左隣に座ろうとしていた俺は、慌てたようなその言葉に腰を浮かせたまま空中で静止した。
「え?なんで?」
いいからと言って立ち上がった穂花が俺の肩を押して地面に座らせ、自分で反対側に回り込んだ。
「こっちの方が大ちゃんのことよく見えるからさ」
「どういうこと?」
わけのわからない穂花の言動に、エナメルバッグを移動させながら首をかしげる。
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