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「大ちゃんには言ってなかったっけ?私、左目見えないからさ」
「…え?」
「久しぶりに大ちゃんの顔よく見たかったから、こっちの方がいいでしょ?」
そう言ってニッコリ微笑む穂花に、俺の頭はついていけないでいた。
「嘘だ…」
笑う穂花の顔を、その両目を見て穂花の言葉を否定する。
「嘘じゃないよ、ほんとに大ちゃんの顔見たくて…」
「違う!…左目が見えないなんて、嘘だよな?」
見当違いなことを言う穂花に突然大声をあげたのに驚いたのか、びくりと動きを止める。
「あ、ごめん…でもずっと一緒にいたけど、そんなそぶり全然…」
慌てて謝る俺に穂花は頭を振って大丈夫だよと笑った。
「私のは生まれてすぐだからね。ほとんど普通の人と変わらないで生活できるよ。あ、でも3Dとかはわかんないからちょっと不便かもなぁ」
元々おっとりした性格のやつだとは思っていたけど、これはそんなに笑顔で言えることなのか?
だって、穂花は俺が気づかなかっただけで、ずっと片目だけの、半分だけの世界で生きてきたってことだろう?
小さい頃そんなことを知らなかった俺は、穂花を傷つけやしなかっただろうか。穂花の見ている世界は、一体どんなものなのだろうか。
考えるだけで身震いがした。
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