慰み者。

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コメントの数も500近く寄せられていて、中には俺宛のファンレターみたいなものもあるらしい。 「もーね、見るのも多すぎてやんなるから!通知オフにしたんだー」 椅子の背もたれに体を預けて背をそらした後輩は、その瞬間、あっ!とでかい声で言った。 「ねぇねぇ兄さん、ちょお見て、一件英語でコメント来てて読めなくてさーあ」 「はぁ?」 「兄さん英語出来るじゃん、ちょっと読んでよ!」 「なんで俺が……」 「ついに海外進出かも知んないじゃん!見るだけいいでしょ、ねー?」 海外進出なんかしたくもない。 とはいえ後輩のしつこいおねだりは止まらず、読むだけ読んでやることにした。 「はいこれ、ほら」 目前に出されたスマホを奪い取り、コメントに目を通す。 「……ん?」 見たことのある名前。 見覚えのある、マッチョでスキンヘッドの写真のアイコン。 まさか。 “I want to employ the man with the tattoo. I am just looking for a good chef.” 書かれていた一文を呟いてみて、思わず笑ってしまった。 「え、何、なんかそんな面白いこと書いてた? 」 後輩の声も聞かずに爆笑する。 まさかじゃなかった。マジかよ。 こんなところでまた会っちゃうとは。     
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