0.Prolog

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 俺は電脳とAIに依存した世の中が嫌いだ。  とか何とか言っては見るものの、実際の所はそれらを作った人間によって引かれたレールの上を、素直に進んでいる。要はそいつらが気に食わないって事だ。  小学校を卒業する頃には、パソコンが得意という事を成績で知った。中学校卒業時にはプログラミングやらネットワークやら、親に説明したら顔が点になる様な用語はある程度覚えていた。  だいたい、この辺りから“レール”の上を進んでいたんではないかとは思う。が、高校・大学と進んで“レール”に抵抗したい事案が度々発生した。  それは高校の時、悪友だがその家族の家庭崩壊の目の当たりにする。原因は後に詳しく語られるが、電脳依存だ。これが原因で、電脳依存というものが嫌いになった。そして、電脳依存を良くするためにと、大学院の研究室に進もうとしていた。が、今働いている日本電脳開発センターの会長なる男が、俺のプログラミングの技術が欲しいと言い出してきた。俺はその男がだす生活環境、報酬を受け入れてしまった。  だから九十九一成という一個人として、今の世の中に聞きたい。電脳とAIに依存し続けて、果たして平穏なのだろうかと。  まぁ、殆どの他人(ヒト)は「多少のトラブルは有るが、いずれ完璧なシステムが完成し平穏になる」  完璧なシステムなんて、人が作り続けている以上不可能だ。向上したAIに完璧になる様にシステムを繰り返し作らせていけば、完成はするだろう。だが、そもそも不完全な人間は完璧には不要となり、昔言われていた技術的特異点で人類は消失だ。  多少のトラブルでさえ、電脳とそれらを使う他人たちによってもたらされた依存(モノ)だ。  自らが作ったデータを公開し閲覧させ、ネットに個を確立できた奴は、現実で個を確立できなくなり、ネットに自分の個を求め。個を無くした奴は、他人のデータを閲覧しあたかも、自分の身に起きたように錯覚し自己満足に浸る。そしてより良いデータを求めてネットをさ迷う様はまるで、B級ホラー映画のゾンビにも見える。だからこの不毛な世の中を、改めて見てほしい。  とは言っても、電脳システムそのものが壊れ、機能停止したらどうなる。世の中のインフラにさえなりだしたこの技術により、人々の生活は困難となり、死ぬ者すら出てくるだろう。
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