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赤い水の隙間から見えた誰かの顔に嬉しくなる。
誰かの温もりが温かくて、冷たい。
時々冷たい目でボクらを見るその目がどうしようもなく怖いけど、ようやくボクらを見てくれるひとが現れたことがたまらなく嬉しくて、幸せなんだ。
ねえ、名前も知らないひと。
ボク達を見つけてくれて、ありがとう。
気付いてくれて、ありがとう。
触れてくれて、ありがとう。
そう直接お礼を言いたいのに、どうしてきみはずっとボク達の上にいるの?
そこにいると赤い水で身体が汚れちゃうよ?
ねえ、どうして何も言ってくれないの?
どうしてずっと目を開けたまま、ボク達を見てるの?
――どうして、そんなに身体が冷たいの?
「ねえ、クロ。このひとはずっとボク達のことを見ていてくれるのかな?」
「さあな。でもたまにこうしてオレらを見てくれたひとは、いつもすぐにどこかに行ってしまうから、多分、このひとも……」
「そっ、か。やっとまた誰かにボク達のことを見つけてもらえたと思ったのにな」
「きっとまたそういうひとが現れるさ」
「……うん。そうだよね」
ボクらはみんなを守るお仕事をしてるのに、誰もボクらを見てはくれない。
でもたまにこうして見て触れてくれるひとがいる。
また誰かに見つけてほしいから、ボクらは今日もこの場所にいる――。
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