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まだ暗い浜辺を歩きながら、滑稽だなと思っていて、ふと思い出した。
あのトンネルの向こうには、小さな港が在る。
そして、さらにその向こうが在るのだ。地元の人間しか知らない場所。
いや、地元の人間も知っているだけで、皆日常では忘れている場所。
言われて、そういえば……。と思い出すような場所だ。
私も小さい頃、何度かそこに行った。
そこは、トンネルを抜け、港を上がり、さらに山側に向かい奥に行く必要がある。
そして大人の背丈ほどの藪を掻き分け進むとじきに見える。
そこは焼けた工場後で、戦後すぐ大爆破を起こして、沢山の人が亡くなった……。
その遺体は、ばらばらに吹き飛び誰が誰かわからず、
肉をかき集めてみかん箱に詰めたと、昔近所のジイさんが怪談でも聞かせるように私達に話して聞かせた。
私達はそこに、冒険半分肝試し半分で行った。
遠い昔の事だ。
なんとなく、話が繋がった。
曰くどころでは無い。
まだ薄暗い中、浜辺に1人、後ろにはあのトンネルがこちらを見つめている。
背筋が少しゾッとした。
あのやり過ぎなくらい打ち付けられた板は、こちらから行く人間を遮断する為ではなく
あちらから来る何かを止めているのだとしたら……。
そう考えると、あの仰々しく打ち付けられた板も納得が行くなと思った。
ただ、今になって出て来るのも変ではあるが。
よそ者が、観光がてらに来て悪さをするからとかなのだろうか? それとも、忘れられた大惨事の記憶を呼び起こさせようというのか。
なんて最もらしい、理由を考える。
私はこういう話が好きである。
噂話の裏に、それを裏付ける誰も知らない真実が隠れているような。
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