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実話だから短いです。
私の地元の浜辺に、山をくり抜ぬいただけのトンネルがある。
隣の港に行くだけの、人しか通れない小さな手彫りのトンネルなのだが
昔は誰でも通れたのに、今では封印の如く
禍々しく板が打ち付けられて、悪戯や密漁防止の為か漁師以外は通行禁止になっている。
ある夏の早朝、久しぶりに実家に帰り釣りにでも行こうと海まで出た。
まだ日も昇らない朝4:00。
私は防波堤に向かう道すがら、浜辺を散歩しようと思った。
浜まで出て、ふとあのトンネルが気になり、見に行こうと思った。
浜辺を歩き、トンネルに着くと
なんの曰くも無い筈のトンネルが、薄暗らさも手伝い異様に不気味に見える。
やたらめったら打ち付けれた板は、本当に何か悪い物を閉じ込めているようだ。
塞ぐにしても、もう少し見栄えの良いやり方もあるだろう。
なんて思いながらも、中々おどろおどろしく様になっていて、
オカルト好きな私は(やるな!)と変に誇らしいようなわけの分からないテンションになった。
そんな事を思いながら、トンネルを見ていると
「そんな所に居て大丈夫ですか?」
と上から声をかけられた。
トンネルのすぐ横はコンクリートの壁があり、その上が舗装された、車が一台通れる位の道になっている。
見ると、大学生くらいの男女4、5人がこちらを見ている。
側には彼らの車が停まっていた。随分前から居たのか、エンジンを切っていたので気付かなかった。
「大丈夫ですよ? どうして、ですか?」
私は聞き返した。
「そこ有名な心霊スポットですよ?」
「え?」
「前にその中に入った奴らが、集団ヒストリーみたいになって、救急車が来たり大変だったって噂です。それで閉じられたらしいです。俺らも肝試しに来たんですけど、実際見たら気味悪くてーー」
「そうなんですか? 気を付けます」
あえてよそ者のふりをして、私は彼らに答えた。
地元だと言うと、色々聞かれそうで面倒だったからだ。
彼らはトンネルの外観だけ見て満足したのか、しばらくして去って行った。
本当だろうか? そんな事件が有ったなんて、聞いた事がない。
まあ心霊スポットなんて、こんな風に出来るんだろうな。
他所から来た人間には、ただのトンネルも、入るのも躊躇する魔の化トンになる。
中々面白い。
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