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体育館裏のベンチには伊奈がごろりと横になって鈴蘭に手を振っており、誠悟は端っこの方で窮屈そうに体を縮めて座っていた。 「鈴ちゃーん、やほやほ~」 相変わらず暢気な伊奈を見ると、先日の夜の事は鈴蘭だけが見た悪い夢のように感じる。 伊奈は鈴蘭に気を遣うとか心配するとか、そういった特別な態度を全く取らず、ゆるゆるとしたいつもの時間がここには流れていた。 「鈴!」 誠悟がぎゅうぎゅうと伊奈を押し退けて鈴蘭のためにスペースを空けてくれた。 「ちょっと~。箱宮君、酷いよ~」 「伊奈。俺はこれから鈴蘭と昼食を摂るので、ぜひあっちのベンチに移ってくれ」 真剣な顔で伊奈に向き合う誠悟に、思わず鈴蘭は吹き出した。 「いいよ。伊奈君。伊奈君も一緒に食べよう」 「鈴ちゃんは優しいなあ~。箱宮君は心が狭い!」 「なにっ!?」 伊奈はマイペースで空気を読まないように見えるけど、一緒にいると緊張が解ける。 相馬は伊奈のそういうところが好きなのかも──、運命とかじゃなく、もっと彼の人間性を居心地よく思っているのではないかと思った。 「そういやさ~、鈴ちゃん達はあの後、やった?」 伊奈は弁当箱の中身をつまみながら、鈴蘭へ上目遣いで窺った。 「やった?何を?」 何かやるべき事があっただろうか、鈴蘭が首を傾げると、伊奈は呆れたように耳打ちしてきた。 「ちょっと!伊奈君…!」 伊奈が発した単語に、鈴蘭は首まで赤くなる。 隣に座る誠悟を見ると、彼は聞かずとも察しているのか、鈴蘭と同じように顔を真っ赤にしていた。
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