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もう鈴蘭に迷いはなかった。
自分はいずれ誠悟と番う。
それは運命の番として引き寄せられたことから始まったけれど、最後の決断は自分達で決める。
運命に逆らうということではなくて、その運命を納得してから受け入れる。
そう決めた鈴蘭には、未知の存在はもうすでに何の障害にもならなかった。
「そういや、未知はどうしてる?」
ちょうど未知のことを思い浮かべた時、伊奈の口からその名が飛び出し心臓がきゅっと跳ねた。
「未知は、来てないよ。僕のこと、まだ怒っているんだと思う」
「ふうん。で、鈴ちゃんはまたそんな未知に遠慮するの?」
ついこの前まではそんなことを聞かれたら何も言えずにうつむいていただろう、しかし…。
「僕、もう未知のことは気にしない。僕は僕の気持ちを一番大切にするって決めたんだ」
鈴蘭は伊奈の顔をまっすぐに見つめて宣言した。
「そっか~。いいじゃん、いいじゃん。いいことじゃん!」
伊奈は快活に笑う。
「うん、そうだね」
鈴蘭はうなずいて誠悟を見た。
自分の発言がこんなにも誠悟の顔を幸せそうに微笑ませている。
この決断が、自分達の運命が、きっと正しいものだったと証明させよう。
そのためにはこの恋に遠慮なんて絶対しない。
誠悟の笑顔に、鈴蘭の心は決まっていった。
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