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映画館を出るともうすっかり夜になってしまっていた。 「もう、誠悟、怖がりすぎだよ」 「だってあんなふうに突然出たら驚くだろう」 「それにしたって…」 誠悟はホラー系が苦手だ。 なのに鈴蘭を楽しませるために今日の映画につきあってくれた。 そういうところも大好きだなあ、と鈴蘭は館内での誠悟の怯えようを思い出しながら繁華街を歩いた。 今日観た映画は公開されてかなり日にちが経っていたので、上映されている映画館に限りがあった。 ネットで調べてあまり訪れたことのない大きな街の映画館にやってきたのだ。 「ねえ、駅、こっちだっけ?」 誠悟もあまり土地勘がないらしく、いつの間にかひとけのない裏通りに迷い込んでしまった。 表通りは華やかでたくさんの人々が往来していたのに、裏通りは寂れた飲み屋や風俗店がチカチカとピンクや紫のネオンを光らせている。 少し湿っぽいすえたような空気を感じ、あまりの場違い感に鈴蘭達は来た道を戻ろうとした。 「ねえ!待ってよ!」 奥の店の扉が勢いよく開き、二人分のシルエットが飛び出してきた。 「おい、しつこいぞ」 「だって今日泊めてくれるっていったじゃないか!」
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