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「未知…、大丈夫…?」 鈴蘭は震えそうになる手に力を込めて差し出した。 しかし未知はその手を勢いよく払う。 「あ~あ。何で見つかっちゃったかな」 服についた埃を払い、未知はちらりと鈴蘭の背後へと視線を移した。 「ふん…。僕がいなくなって幸せいっぱいって感じだね。運命の番なんだっけ?でもまだ、それ、取れてないんだ?」 未知は鈴蘭の首輪を指先でなぞる。 そう言う未知の首にも、黒くて固そうな首輪がついていた。 「じゃあね、さよなら」 未知は扉に手をかけ店の中に戻ろうとした。 「待ってよ!未知…!今まで何してたんだ!?何でこんなところにいるんだ…」 どう見ても未成年がうろつくような場所ではない。 時々、明らかに夜の商売をしているような人間だけが、鈴蘭達を胡散臭そうに眺めて去って行く。 「こんなところって…、ここがどういうところか知らないんだ?」 未知は馬鹿にしたように鼻で笑うと、ぞっとするような醒めた目で鈴蘭を真正面から見据えてきた。 「し…、知らない」 「鈴…」 両肩に優しく誠悟の手がかかった。 振り返れば彼も、不安に瞳を揺らしていた。 「ここはね、」 クスリと未知が密やかに笑う。 その笑い方に、よくない予感が全身を支配した。
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