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「ここは、オメガの帰るところだよ」 ほら、やっぱり。 自分達が生まれるずっとずっと昔、この性にオメガという名前が与えられる以前から、突然狂ったように発情する人間だけを集めて性を売り物にする場所があったことは知っていた。 まだ抑制剤なんてものはなく、発情したオメガはヒートしたアルファ達に陵辱され、運悪く殺されてしまうこともあったそうだ。 そこでオメガだけを集めた街が作られ、彼ら、彼女らは春をひさいで生きのびた。 そういうこともあり、今の世でもオメガは偏見の目で見られている。 オメガ性の者に向かって、「売春婦の末裔」だなんて陰口をたたく年寄りもいる。 この黒い歴史は教科書には載っていないが、実際にあったこととして多くの資料が残っていた。 そしてその名残はこうやって行き場のないオメガが集まる場所として今も存在している。 オメガというだけで親に捨てられたり、まともな職につけなかったり、そういう人々が今も過去のオメガ達と同じ生業で生きている。 幸いに鈴蘭は生まれてこの歳までそういった場所に足を踏み入れることなく生きてきた。 ここは堕ちたオメガの集まる場所。 きっと陰鬱としたフェロモンに満ちている。
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