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しかしその代償に、星崎家の人間にはオメガの血が混ざった。 星崎家に時々オメガの子供が生まれるのはそのせいだ。 オメガの発情期は親兄弟であろうともアルファの理性を壊してしまう。 そのため家の敷地の端に小さな洋館が建てられたのだ。 ここ数十年は発情期を抑制する、よく効く薬が開発されてきて本館とこの離れを別にする意味もなくなってきたのだが、星崎家のオメガは代々、思春期になるとこの洋館に住まいを移す習わしがある。 そしてこの洋館に鈴蘭の父がやって来るのは初めてのことだった。 「鈴蘭、九条さんのパーティーがあるのは知っているよね」 父の問いに鈴蘭は素直にうなずいた。 毎年未知が、未知の祖父の誕生日パーティーを楽しみにしているのを知っていたから。 「今度のパーティーは鈴蘭が同伴することになった。だから鈴蘭、しばらく髪の毛を伸ばしていなさい」 「えっ」 いつかそういう日が来るのだろうとは思っていたが、突然そう宣告され驚きに目を瞠った。 今までそれは、五つ年上の従兄である椿の役割だったからだ。
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