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深夜、日付を跨いだ頃、悶々とした気持ちで眠れずにいると部屋の扉がノックされた。 「鈴…、起きてる?」 「うん、起きてる」 ベッドに横たわっていてもいつまでも頭は冴えきっている。 控えめに扉が少し開き、椿が顔を覗かせた。 「…由井さんが来てるよ。どうする?」 「行く!」 ベッドから飛び起き、椿を吹き飛ばしそうな勢いで扉を開け階下へと向かった。 階段を駆け下りるとホールに由井が背筋を伸ばして立っていた。 「夜分遅くに申し訳ございません。お休みになっているならすぐにお暇しようと思ったのですが……」 鈴蘭が由井の目の前まで行くと、彼は目を細めて薄く笑った。 「未知のこと、気になってきっと眠れないでしょう?」 由井は労るように鈴蘭の髪を撫でた。 この人はこんな時でも恐ろしいくらいの色気を放っている。 昔の椿に似た、この世のものとは思えないほどの妖艶な笑みを見て少し腰が引けた。 「由井さん、こっち、どうぞ」 椿がリビングに続く扉を開いた。 「そうですね。少し長い話になるかもしれませんから…大丈夫ですか?」 「うん、平気…」 由井に続き鈴蘭も開かれた扉の奥へと入った。
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