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「由井さんはミルクティーでいいよね。鈴はホットミルク」 椿は由井の好みを把握しているかのようにカップをテーブルに置いた。 「ありがとう…。あなたのミルクティーがまた飲める日が来るなんて、ね…」 由井は意味深な目配せを椿に送る。 パーティーで鈴蘭が発情した夜、由井はこの館の間取りを知っているようだった。 二人の間には迂闊に尋ねられない何かがあったのだと感じる。 「星崎君、今日は未知を見つけてくれて感謝します」 薄い笑みを貼りつけ、由井は鈴蘭へ顔を向けた。 「うん…」 由井の言葉に、未知は誰にも行き先を告げず家を出てしまっていたのだとわかった。 海外留学なんて本当に根拠のない噂だったのだ。 未知は長い間たった一人で、自分の体を使ってこの世界を生き抜いていたのかもしれない。 しかしその理由がわからない。 あの夜のことで、九条氏や未知の両親にこっぴどく叱られ家を飛び出したのだろうか。 それにしたって身を売るような真似を、あの未知がするだろうか。 「ああ……、さあ、どこから話せばいいのかな…」 由井はゆったりとソファーでその長い足を組み、カップに唇を寄せ遠くを見つめている。 まるで映画のワンシーンのようなその姿。 でもこれから語られるのは映画のお話なんかではない。
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