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噂話が好きなわけではないけれど、鈴蘭も他の人々と同じように彼らのことを九条の愛人だと思い込んでいた。 自分も噂好きな人達と何も変わらないのだと恥じる。 「九条氏は彼らに復讐する機会を与えているのです。彼らはどこの誰とも知らないアルファにいいようにされた。ただどのアルファにも共通するのは金と、それなりの社会的地位があるということ。だから九条氏はそういうアルファが集まる場所に彼らを連れて行く。彼らを穢し弄んで捨てたアルファを探している」 「でも復讐って…。もしそのアルファが見つかったらどうするんですか…」 「方法はいくらでもある…、彼にはひとつの企業を乗っ取るくらいお手のものですからね。そもそもオメガを玩具にする人間など信用することはできない。そういった人間を社会的に抹消すること、それが九条氏が彼らの復讐の手段として選んだ方法です」 「そうなんですか…。でも、それが未知とどういう…」 九条に黒い噂がつきまとう理由、それはオメガの者達の復讐に加担し、相当冷酷ややり方をしていることが原因だろう。 でもなぜ由井はそんなことを鈴蘭に話して聞かせたのだろうか。 もしかして未知も、アルファに弄ばれた一人なのだろうか。 「九条氏は、オメガであっても差別せず、優秀な人材ならば自分の元に置くことは知っていますよね」 鈴蘭は頷いた。 九条の秘書である由井も、オメガ性でありながら相当な切れ者だと言われている。 「私が九条氏に秘書として引き抜かれる以前に、彼の秘書のひとりにとても優秀なオメガの女性がいたそうです」 遠い目をして由井は言葉を選びながら話す。 ここからが未知のことの本題だと鈴蘭は察した。
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